印鑑は卒業記念

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私の住む町では、中学校を卒業する時に印鑑が贈られます。それが、私にとってのはじめての印鑑でした。立派、とは言い難い、いわゆる三文判なのでしょう。それでも、なんだか大人になったような気がして、こそばゆいような、うれしいような気持で、意味もなく、ためしに何度も印鑑を押した覚えがあります。

 中学卒業記念の印鑑は、実印になるような立派なものではありませんでした。せいぜい認め印として使えるようなものです。社会人になり、職場で使い、宅急便を受け取る時に使い、色々な場面で中学卒業記念の印鑑を使い続けてきました。それは、私が結婚し、姓を変えるまで続いたのです。

 結婚後は相手の姓を名乗ったため、その印鑑を使うことはなくなりましたが、どうしても捨てることができず、今でも大事に取っておいてあります。

 子供達も中学を卒業する時に、記念に印鑑を送られました。子供たちにとってのはじめての印鑑です。子供らがはじめての印鑑にどんな風に思いを寄せているかは分かりませんが、彼らあての宅急便が届いた時には、自分の印鑑を持って玄関に走って行くようになりました。その様を見て、確実に親離れをしてきているということを感じずにはいられないのです。

 私をはじめ、結婚し、家庭に入ってしまった女性は、なかなか自分の実印を持つことはありません。結局私は、自分の実印を持つことはありませんでした。でも、子供達は、この先、自分の実印を持つこともあるでしょう。その時、どんなことを思うのでしょうか。認め印でさえ、はじめての印鑑は、自分に大人としての自覚を持たせました。それが実印となれば、さらなる大人としての自覚と責任を感じるようになるのではないでしょうか。

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